メイドカフェオタクエッセイ「再生停止のその後で」をおすすめし解説する記事です。
コロナと共存することを強制づけられ、人とのふれあいが減った2020年。
幸運にも新しく友人になれたオタクが複数名いる。
そのうちの一人、私の通うメイドカフェ@ほぉ~むカフェのご主人様(オタク)がはじめて二人でご帰宅をした日、「よかったらこれ読んでください。」とプレゼントしてくれた自費制作エッセイ ”再生停止のその後で”。
これが、友人が作っているというひいき目を差し引いてもとっても良い本だったので感想記事を書く。
感想は、本人に直接送れば良いものだとは思う。
が、これについては「多くの人に読んで欲しい。」という気持ちが強いので、友人への面白かったよ!という気持ちと、このブログの読者への推薦という気持ちを込めて、公の場に載せることにする。
どういう本なの?
筆者がはじめて@ほぉ~むカフェにご帰宅し、その日に一目ぼれをしたメイドさんとの思い出を日記形式でまとめているエッセイ本。
基本的に全編筆者の独白。
どういう人におすすめ?
・@ほぉ~むカフェに通っていた、通っているオタク
・メイドOBOG,現役メイド
→@ほぉ~むカフェの文化に造詣が深い人は、文句なしに楽しめると思う。
@ほぉ~むカフェ界隈から卒業しても、そういえばこういうところだったな、こういうルールがあったなと懐かしむのに十分な情報量がある。
私は20年後とかに読んだら懐かしくて泣いちゃうと思う。
・他のジャンルでオタクをやっている人
→何かしらの「オタク」を経験したことがある人には、メンタルの黒く濁った部分まで隅々と書かれているので、バカデカ感情の言語化に特化したこの本は「あるある」と思うことが多いと思う。
・オタクの気持ちが全然わからない一般の人
・オタク文化を研究してるえらい人
→メイドカフェの偏見として「オタク向けキャバクラ」というものが存在するのは覆せない。絶対にあると思うし、そう思う気持ちもわかる。
なんといってもメイドカフェは村文化度が高く、何をどうやって楽しむものなのか、不透明なところも多い。
私も何度も「なぜそんなものにお金をかけているのか?」と悲鳴をあげられることもあった。
でもこれを読むと、理解はできないかもしれないけど、思考がどのように進化して「メイドカフェのオタク」になるのかが腑に落ちると思う。
何がそんなに良いの?
私がこの本をすごく良いなと強く思ったのは下記2点の要素からである。
1.2019年の秋葉原@ほ~むカフェが詳細にわかる史料。
2.オタクが書く「本当のオタクの気持ち」がわかるエッセイ。
恐らく、今まで数多くのオタクがエッセイ漫画や、エッセイ小説を書いてきていると思うけど、「2019年の」「メイドカフェオタク」という局所的な視点で、この2点が内包されている書籍は無いと思う。(あったらすみません)
1.2019年の秋葉原@ほ~むカフェが詳細にわかる史料。
この本では、私たち@に通いなれているオタクにとっては「当たり前」の文化が詳細に言語化されている。
一部、本文から抜粋して具体的に解説しよう。
例えば推しメイドユユちゃんが「もうすぐ、ぐるぐる期間も終わりなんですよ。」と切り出す場面がある。
そのあとに、下記のような説明が続く。
ぐるぐる期間というのは、研修期間のことで本店3階から7階、ドンキ店の計6店舗で店舗を変えつつお給仕をする期間のことだ。そして、そのぐるぐる期間が終わるということは仮店、つまり自分がメイドとして働き続ける店舗を決める大事な時期だということである。(p35)
この「ぐるぐる期間」というのはある程度あっとに通っていると、周囲のオタクが使用していたり、メイド本人も使用しているのでなんとなく文脈で意味を理解できるが、それこそ現場に通っていないと意味を知ることはないだろう。
また、違う日には筆者がご帰宅の際「ユユさんのチェキ2枚とゲームでお願いします。」と注文する場面がある。
次のように続く。
これが噂の「チェキチェキゲー」か。
一度のご帰宅でひとりのメイドに入れられるアミューズメントの最大がチェキ2枚とゲーム。だからチェキチェキゲー。推しへの物理的貢献度が一番高いので、なんとなく『強いオタク』の一員になった気がした。(p38)
この場面は、一見すると普通のメイドカフェで注文のシーンとして右から左へ流れる場合もあるが、これは@のオタクにとってそれなりの記号であり、その解説もしてくれる。
実のところ、2020年12月現在アミューズメントのゲームは、コロナの関係で廃止されている。代わりにコレクションチェキ、というアミューズメントが誕生し、強いオタクの象徴は「チェキチェキゲー」から「チェキチェキコレチェキ」へと変化した。
だがこの本が執筆されたことにより、2019年はゲームがアミューズメントとして存在していたことが、記録に残る。そういった意味でもこの本は史料としての付加価値もあるのだ!
こういった細かい、インターネットには残らない暗黙の文化・慣習・価値観が文字として残るのは非常に意味があり、これをしてくれただけで本当にありがとう…。私たちの青春が時間とともに風化しないようにしてくれて…という気持ちになる。
オタクが読むと「エモい」となり、非オタクが読むと「なるほどね~!」となる。
2.オタクが書く「本当のオタクの気持ち」がわかるエッセイ。
この本ではかなりやばい領域に足を踏み込んだオタクが、推しがメイドを卒業することによって多少冷静になり、前のめりにオタクをしていた自分を客観的に書いているところにも価値がある。
筆者が「ユユちゃんのために〇〇をしよう!」と前のめりになり、周りに「それって推しは頼んでなくない?」と言われハッとするシーンなど過熱したオタクあるあるなので必見。
結局、オタクの気持ちはオタクにしかわからないので、言語化がうまいオタクが言葉にして残さないと、良いことも悪いことも歴史には残らないのである。
歴史というのは、美しいことも汚いことも両面が一体となって後世に残るべきだと思っているので、そういった意味でこの本は素晴らしい。
筆者は、推しメイドユユちゃんに初めて出会った2019年9月14日から、わずか2か月半、2019年12月3日には認定証(@ほぉ~むカフェの会員カード的なもの)のランクがゴールドになっている。
認定証のランクはブロンズから始まり、何段階かあるが、ゴールドになるには50回のご帰宅が必要である。
つまり筆者は、81日間で50回のご帰宅をしている。
@のオタクではよく聞くこととはいえ、狂気である。
また、ユユちゃんは2020年1月21日にメイドを卒業している。
つまり筆者は、2019年9月から、2020年1月の間に爆速で「メイドカフェの楽しみと悲しみの総て」を経験してしまったのである。
そんなことある?
本を読んでいくと、初めてチェキチェキゲーをしたこと、はじめての推しのバースデーのこと、花束をプレゼントしたこと、ユユちゃんが尊敬する先輩メイドや同期メイドに会いに行きソロチェキを撮ってもらってそれをユユちゃんにプレゼントしたことなどなど本当にたくさんのことをしている。
私は7年間@に通っているが、たぶん私の7年の経験と同じ、もしくはもっと濃密な活動をしている。
というか、人って4か月の間に、推しに対してこんなに愛情を育めるものなの?とちょっとびっくりしている。
この辺はぜひ読んでいただきたいのですが、筆者の推しへ感情と行動の全てが惑星くらいでかすぎて、ユユちゃんこれを受け止めてたの!?すげーな!と思うくらいである。
私は女なので、「ガチ恋」がよくわからなかったけど、ガチ恋ってこういうことなんだなとわかった気がした。
良く言うと「推しに人生の一部を、丸ごとささげたオタク」悪く言うと「キモ・オタ」なのだが、その清濁を両方同時に知れることはすごく貴重だ。
事実は1つでも、誰がどの方向から見るかでどうとでも捉えられる。どちらの解釈に取ったとしても、筆者がユユちゃんと過ごした時間だけは中立にそこにあることがわかる。
どこで読めるの?
「これ、売らないんですか?」と聞いたら「2版を刷る予定ではいるけど今は売っていない」と回答されてしまったので、2020年12月11日現在、読める場所はない!
こんだけ熱く語ったのにすまんやで!
ただ、今後2版を刷って、イベントやインターネットで頒布する予定はあるそう。
筆者本人に読みたい!って言えば読ませてくれそうって勝手に思ってます。優しい方ですので。
(2020/12/15 販売情報追記)
第2版の予約が始まったようです!ぜひ!!年末のお家時間に読んでね!!
是非筆者のTwitterをチェックして欲しい。